体験と物販を結ぶ

茶歌舞伎体験
奈良で12月初旬に開催された地紅茶サミット。そこで初めて「茶歌舞伎」を体験しました。古民家を会場に、畳のお部屋で和紅茶3種、煎茶2種を当てるのです。「茶歌舞伎って何?」という素人女性が12人、主催者の方から「南北朝時代には家屋敷や土地を賭けた」という説明を聞き、へええええっと興味津々。「公平を期するために主催者が用意した4種のお茶以外に、お客様が持参したお茶を一つ入れて5種類のお茶を当てたから、花鳥風月客とお茶に名前がついているのだ」と聞き、ほおおおおおっと唸り、実際に札を入れる箱の仕組みと札の入れ方の説明を受け、札を手に取りテンションは上がり、真剣にお茶と向き合いました。
紅茶と煎茶の混合ですから、もちろん茶歌舞伎と称するには易しいものですが、それでも茶葉を拝見盆で確認した後にお茶が湯呑みに注がれると、「きゃあー、どきどきする!」「こんなにお茶に向き合ったの初めて!」という声が聞こえます。2巡で約1時間のプロセスですが、500円の参加費は安過ぎる。もっとこれを儲けにつなげられないかな、1,000円の参加費と茶歌舞伎に出たお茶を最後に販売したら、持続的な商売につなげられるのではないかな、と感じました。
マニア向けでなく、マニア気分を味わう
以前消費者の座談会に日本茶アドバイザーの方が参加されたことがあり、茶歌舞伎の話が出たのですが、その時の反応は「えーっ、煎茶と玉露で5種類とか、ぜったいムリムリ」「それ、高度過ぎてストレスだよね」という反応でした。今回は和紅茶と煎茶の茶歌舞伎というハードルの低さが、あまりマニア向けでなくて、それでいてマニア気分を楽しめる点で秀逸だったと思います。
あるお茶屋さんが、煎茶・焙じ茶・玄米茶・和紅茶・抹茶の5種類にして、フィルターインボトルでお茶を作れば、茶歌舞伎も外人さんや若い人向けになる、とおっしゃっていたのですが、そういう体験をした後で、フィルターインボトルとお茶の物販につなげたら、「お茶の世界の奥深さを味わった」という満足感を得て、お茶が好きになるかもしれませんね。小学生に向けて夏休みの自由研究に展開できるように組み立てることも出来そうです。
好きになる体験
地紅茶サミットは1,500円の参加費で、39ブースの試飲のお茶が飲み放題。渋谷ヒカリエの日本茶アワードでは1,000円で入賞茶が飲み比べられます。いずれも、試飲用の小さな陶器のカップを購入する、というカタチをとっていますが、いろいろなお茶を飲み比べるのは、とても楽しい体験でした。
売る前に、好きになってもらうことはとても大切だし、日本茶の世界はこんなに奥行きが深いんだ、ということを伝えることが出来ると、好きになってくれる確率が確実に上がる、という気がします。逆に、モノが溢れる現代で、好きでもないものを買うことはない、と言えるのかもしれません。
あるお茶屋さんが大学との産学連携で学生さんと触れ合う中で、「お茶は作れるのか?」と質問され、最初は何を言っているのかわからなかったが、学生さんにとっては工業製品であるペットボトルのお茶がスタンダードであり、急須で淹れることを知らないので、「お茶は(家で)(自分で)(急須で)作れるのか?」という発言になったと判明してショーゲキを受けた、とおっしゃっていました。ほんと、時代はそこまで来ている。お茶はペットボトルで充分と思っている人達に、「へええええっ」「ほおおおおっ」という感嘆詞とともに、お茶を好きになってもらう仕掛けをいろいろしていきたいですね。