「はず」と「だろう」のウソ

若い人が好むはず?  

 座談会の旅で、エリアに関係なく象徴的な出来事がありました。それは新茶袋のデザイン投票の時に「若い人が好むはず」と選ばれたデザインを、実際の若い人は選ばないという事実! 
 世代別に1エリア三回の座談会をするのですが、おおまかに分けると、20代~40歳まで、40代から60歳まで、それ以上、という感じ。
 そして、30近くあるデザインの中から、買ってもいいな、と思えるものを5つまで選んでもらい、点数をカードに記入していただくというやり方でデザイン投票は進めます。その後、お気に入りのデザインの講評をしていただくのです。
 その中で、近年特に増えているのが「若い人に好まれるだろう」というコメント。これは特に50代60代に多く聞かれます。「このデザイン、普段お茶を飲まない若い人にも手に取ってもらえそうだし、かわいいので選びました」という感じで話されます。
 そしてそこで選ばれるデザインは、どちらかというとポップで色使いが明るくてキラキラッとしているという共通点があります。


若い人は保守的。

 ところが、実際の若い世代は、渋くて保守的なデザインに票が集中します。特に今年の投票で面白かったのは静岡エリア。一番上の世代が選んだデザインと、女子高校生グループ(静岡だけ女子高校生の座談会に挑戦しました!)の選んだデザインは集計してみるとぴったり同じだったのです!

 逆に、真ん中の世代が「このデザインは若い子に好まれる」と選んだデザインは、若い世代からはどちらかというと不人気で、「日本茶に媚びてほしくない」「これではハーブや紅茶みたいで、お茶の中味に自信がないのではないか、と感じる」などというコメントが寄せられてしまう始末。
 どこかの統計資料で、「バブル以降に青春を送った世代は、堅実で保守的。海外旅行をしたことがない人も多く、日本的なものを過剰に評価する傾向がある」と読みましたが、新茶デザイン投票の結果を見ると「なるほどなあ」と思う部分があります。


確信犯か、勘違いか?

 ここで私たちが心に刻んだのは、商品の企画をしている時に陥りやすいワナ。つまり、たとえば40歳の自分が「若い人に受けそう」と思うのは、事実ではなく意見だということ。もっと言ってしまえば、真実の逆の可能性さえあるということ。
ちがう見方をすれば、40歳の人は「若い人に受けそうなこの商品を私も使おう」という選び方をする可能性がある訳なので、若い人向けを装った40歳をターゲットにした商品を作る、という作戦をたてることができます。たとえば40歳の人がよく読む雑誌や地元情報誌に「若い人に人気!」と無料プレゼントを掲載するとか、40歳の人への商品説明に「若い人に人気なんですよ!」というトークを入れてみる、ということですね。
 きっと、確信犯か、勘違いか、結果には大きな違いがあることでしょう!心して事実と意見を分けて認識しよう、と心に誓ったのでした。