第48号 豊園茶舗 熱い店長 田中康蔵氏

茶業に携わるたくさんのガンバル人の中から、
とびきりの頑張りやさんをご紹介するこのページ。
今回ご紹介する流山・豊園様の田中康蔵氏は、
ホームページやメールの署名に「熱い店長」とあ
る38歳。なんと店頭に日本茶の仕上げ製茶機を
導入し、自らの手で「豊園のお茶」を創ります。
キーワードは「薫と香る」。その上、茶業界の常識
を破る店長は日本茶だけでは飽き足らず、珈琲・
落花生も自家焙煎、アイスクリーム・ソフトクリーム
も自家製造。日々全力疾走されています。
豊園茶舗
熱い店長 田中 康蔵氏

奥様が描かれた店長のイラスト。
日本一焙煎する男「Mr.自家焙煎」。 

熱い思いがダイレクトに伝わる
ホームページ。
時間を忘れる面白さ。
もともと、お茶屋さん志望だったのですか?
家業でしたし、父親が一生懸命取り組んでいる姿を見て育ちましたから。ただやるからには、「親を超えたい」という思いは強くありましたね。
もともと陸上の短距離の選手で、小中学生の頃は新記録をバンバン出してオリンピックも射程距離にあってね、体育会系というか、そういう世界しか知らずに大きくなった。でも大学の頃には記録が落ちて「つぶれた田中」とか蔭で言われて、すごく悔しい気持ちを抱いて社会人になったワケです。「世の中に出たら俺はぜったい負けないぞ。」みたいなね。
実際は、大学を卒業してから洋菓子の専門学校に一年通って、その後掛川の茶農家に2年住み込みました。西口本店は親父の店でして、東口店を改装するという話になって私が戻ってきたんです。

限定のお茶「水無し月」では、
味・香りの指標をビジュアルで表現した。
最初から「自家焙煎」にこだわった店を作ろうと考えていたのですか?
 
いえ、最初は客寄せに落花生をデモンストレーション用の機械で細々と煎っていたんです。 中国産の落花生が低価格で市場に入ってきて、千葉産が売れなくなった頃だったけど、 あるお客様が「あなたの煎った落花生でなければ欲しくない。」と言ってくださった。 この言葉が大きな転機になりました。
消費者が「この味なのにこんなに安いの?」と感動するような価格設定するには、 どうしたらよいか? 味にこだわれば「鮮度は命」。 問屋から仕入れたものを店に並べるだけの商売では専門店として「自分らしさ」を出せません。
まず最初は落花生の機械を、一日三百キロの能力の機械にしました。次に珈琲、これは一日百キロ焙煎できます。
茶専門店の存在意義。
そして、お茶の仕上げ機ですね。
そう考えて機械屋さんに飛び込んだんですが、「無謀だ」「前例がない」とまったく相手にされなかったですね。仕上げる技術を知らない私が、店頭で仕上げるなんてリスクが大き過ぎると言われました。
でも諦めなかった。「これがなくては差別化出来ない。」という熱い思いは揺るがなかった。二年半かかって通い詰めて、根負けしてくれた静岡のメーカーさんに「こうしてくれ、ああしてくれ」と頼んで、やっとこの機械が完成したんです。

店から見える お茶の仕上機。「自力本願」と「不言実行」がポリシーの熱い店長が、お客様に「出来たてのお茶」を振舞うこともしばしば。
お父様は賛成されましたか? 
やはり「無謀だ!」と言われました。私は「生葉から調達するワケではないのだから、仕上茶の替わりに荒茶を納入してもらえばいい。」という考えだったので、問屋さんとも共存共栄できるという思いでしたが、父は違う判断でした。協力してくれる問屋さんはないだろう…と。
でも「どうやったらお客さんに安くておいしくて良い商品を届けられるのか」と産地との往復を重ねるうちに、私の気持ちを真剣に聞いてくれる親友とも師匠とも言える生産者・製茶会社さんと出会えたんです。10年かかりましたね。父も最後には理解をしてくれ、背中を押してくれました。
親が「勝手にしろ」という姿勢で、私一人が勝手に突っ走っていたら、今頃はどうなっていたことか。茶業界の常識から大きく外れたことをしようとしている息子を信じて任せて成功への手助けをしてくれたこと、人生の先輩としてすごい度胸だと思うし、尊敬するし、ありがたいと思っています。
この機械は、一日何キロの仕上げができるのですか?
最低二十五キロから最高三百キロまでです。経済性とか「儲けよう」という発想だったら出来ないですよ。夏は熱いし、職場環境は劣悪。お茶の粉まみれになって、ミドリ亀状態(笑)。機械のメンテナンスも手間がかかりますし、例えば千円のお茶を三十キロ失敗したら三十万円パーになる。
でも、炊き立てのごはんと冷凍食品をチンしただけのものと、どちらに感動します? 商売はONかOFF。やるとなったら徹底的にやる。中途半端にやるくらいなら、やらないと決めた方がマシです。私は、手間をかけた手造りのごはんに冷凍食品では真似できないおいしさがあるように、「自分がこの店で作ったお茶」という価値は、ぜったいお客さんに届くと信じているんです。もちろん「安全で本物」ということが根っこですよ。
ぐぐぐっときて「薫と香るお茶」というのがコンセプト。中間流通を省いた「正直一本槍価格」で、一番人気の「やっ茶ん」は二百グラム千円。一ヶ月に一度の売り出しにはチラシを二万五千枚撒きますが、チラシの威力というよりお客様へのスイッチという感じで、三日間で二千人の来店があります。

ハードタイプの茶屋アイスは夏ギフトの人気商品。送料込みで3,000円。
ホームページを見ても感じるのですが薫と香る」とか「正直一本槍価格」とか
「熱い店長」とか、商品やお店のポイントをパッと表現するのがお上手ですね。
これは嫁さんのおかげです。結婚前はイラストレーターだったので、私が勢いだけで突っ走ってきたものを、きちんと論理的に押さえてインパクトのある表現でお客さんに伝えるという部分を担ってくれています。チラシもホームページもイラストも彼女のお手製。本当に色々な人の協力があって、自分のやる気を具現化できているんだと感謝していますよ。
今後の展望についてお聞かせください。
六月から毎月その季節にふさわしいお茶を、限定百本で企画販売する「豊園お茶畑倶楽部」を始めました。六月の「水無月」は大好評で即売り切れましたが、お客様の評価を直接聞いて商品にフィードバックできる強味を活かして、十二ヶ月挑戦してみます。地域の人達に愛されるお茶・お店であるためにも、お客様のナマの声にはキッチリ耳を傾けて、五感に響く「薫と香る」味に自分自身の生涯をかけていきたいですね。

「元気なスタンプ会」として蘇らせ、講演依頼があるほど。
「お客様を感動させたい!」という熱い思いはとどまるところを知らない。

自分の店の仕事に全力投球だけでなく、流山江戸川台ふれあいスタンプの会の会長という顔も持つ。
 
豊園茶舗〈東口店〉
〒270‐0111 千葉県流山市江戸川台東2-12
TEL/FAX 0471-52-1315
URL http://www.yutakaen.com
http://www.rakuten.co.jp/jikabaisen
E-mail tanaka@yutakaen.com
豊園茶舗〈西口本店〉
〒270‐0115 千葉県流山市江戸川台西2-49
TEL/FAX 0471-52-0531