第46号 丸善製茶株式会社 古橋剛俊氏

積極的な経営で明日を拓く経営者をご紹介するこのコーナー。
今回ご登場いただいたのは、静岡の茶問屋・丸善製茶様。
有機JAS認定取得に加えて、ISO9001認証取得で二十一世紀をスタートされました。
丸善製茶株式会社
代表取締役 古橋 剛俊氏

「当社は私より社員の方が優秀。」と笑顔で語る社長。
仕事を任せ責任を与える経営で、
マネージャークラスをぐんぐん伸ばす。 

本社全景
創業当時のお話を、お聞かせいただけますか?
私の父が、茨城より日本茶の集散地・静岡に来て、お茶に携わったのが昭和二十三年。それが創業です。大きな大海にお茶を入れて、地方に卸していました。
私が入社したのは昭和四十四年ですが、その二年程前から小袋に詰めた「包装茶」が世に出て流通のチャネルが大きく変わりました。実は、当社は日本で初めて「包装茶」を手掛けた企業なのですよ。それまで、大海に入ったお茶が問屋からお茶屋さんに届き、店先で量り売りされる、というルートしかなかったのですが、密封性の高い袋に入れて流通させるようになったことで、販売ルートに大きな変化がありました。
お茶屋さん以外にも販路を、拡大できたということですか?
まだスーパーが存在しなかった時代です。ある食品問屋を通して、酒屋・米屋・雑貨屋・乾物屋等、食品を扱うお店にどんどん置いていただきました。今では想像ができませんが、ワンボックスのワゴン車にお茶を満杯に積んで、マネキンを使ったりしてね。モノが溢れていない時代だったからでしょう、面白いくらい売れました。現在でも、その食品問屋さんとは懇意にさせていただいていますが、まさにお茶が食品業界の流れに乗った、という感じの画期的な出来事でしたね。
安心と健康を願うお茶づくり。

夏、社員総出の草むしり。

京都府和束町の無農薬有機栽培茶園。
有機JAS認定を取得されましたが、このような取り組みを始めたのは、いつ頃ですか?
有機JAS認定は「農薬も化学肥料も使えない」という大変厳しいものですが、このような法制化はごく最近のことです。当社では、十五年ほど前から、減農薬に取り組んでいました。まだまだ「有機農法」が市民権を得る以前です。
包装茶が乱立するに従って、どのように差別化を図るかが、大きなポイントと考えたことも理由の一つです。が、何よりも「消費者が何を求めているのか」という基本に立ち戻ると、「安心と健康」をお届けすることが茶業者としての使命だと思ったのですよ。
最初は「少しでも農薬を減らそう」という思いから、減農薬に取り組み、八年前に有機農法に真剣に取り組んでいる京都府和束町の生産者グループとの出会いがあって、無農薬有機栽培に本腰を入れました。このグループのリーダーは、無農薬にひたすら取り組んできた人でして、彼との出会いも大きかったですね。
有機JAS認定をとるのは、並大抵ではないとお聞きしますが・・・。
確かに一軒でやろうとしても難しいですね。隣の茶畑から農薬が飛んで来てもだめですし、地域の連携が必須です。たとえば、夏場などは、除草剤を撒けないわけですから、草むしりは大変な作業です。
実は、当社の社員は皆、夏場の草むしりに参加させていただくんですよ。冷房のきいた部屋の中で、「無農薬有機栽培」などと言ってみても、生産家の苦労はわからない。実際に炎天下で農家と一緒に汗を流して草むしりをしてはじめて、「無農薬有機」の本当の価値を、社員自身が体得できると思うのです。
「安心と健康を願うお茶づくり」が、私の信念であり、当社のポリシーです。有機JAS認定はもちろんですが、ISO9001認証取得に関しても、第一番目の品質目標にしました。

新幹線の車窓から[ISO認証取得」の看板が、目に飛び込んでくる丸子工場。
 

ティーバッグの委託加工ライン。

異物混入の防止も兼ねる自動包装ライン。
ISO9001はいつ頃から準備をなさったのですか?
二年前に社内で勉強会を始めました。初めは手探りで、「ISOとは何か」というところからスタートした訳です。少人数の会社なので、業務の時間内にISOの打ち合わせをすることは無理があり、どうしても仕事の後や休日などに時間を作るという感じでした。本当に社員の熱意と努力があったからこそ、ISOの認証取得が出来たと感謝しています。
「手作りだからこそ、このマニュアルには熱い思いがある。」と、部長クラスの者がしみじみと言いますが、ISOの認証取得を通して、営業と工場が点から線になり、全社一丸となることができました。社員の意識の向上は素晴らしいものがありましたね。
本社も工場も、全社で取得されたのですね。
そうです。「一番のセールスは営業ではなく工場なのだ。」と私は社員によく言うのですが、コミュニケーションだけに頼る商売の時代は終わったと思うのですよ。先日FOODEXに出展した時も、新規取引の話になると必ず「工場を見せてくれ」とおっしゃいます。つまり、どんな仕組みを持っているか、という視点で、ビジネスパートナーを選別する時代なのですね。
仕組みでビジネスパートナーを
選別する時代。

檜作りの冷蔵庫。年間通して湿度20%温度0度で管理する。
ISO勉強会は、日付が変わる時間まで続いたこともあると言う。
新規取引の引き合いが来る、というのは、すごいことですね。
今は量販店などでも「無農薬有機栽培」を「差別化のポイント」ととらえていますね。その上、法律の規定によって、「有機JAS認定」と表示できるお茶は限定されましたので、当社のように認定取得している企業に対する関心度は高いようです。
今後の課題は年間販売量です。生産者は、三年以上無農薬無化学肥料を貫いて初めて、有機JAS認定を受ける資格ができるわけですから、生産量には限界があります。減農薬から始めてどのようにステップアップしていくか、また「エコファーマー」という「環境にやさしい農業」に関する静岡県のガイドライン等を活用して生産者を指導することが、当社の経営理念「安心と健康を願うお茶づくり」を広げるためにも、必要不可欠な役割だと考えています。
最後に丸善製茶様の業務内容について、簡単に教えてください。
茶問屋として消費地のお茶屋さんに卸しているのが四割。食品問屋さんを通して量販店の店頭に丸善製茶の名前で並ぶのが四割。残りの二割は、ティーバッグの委託加工です。
この三本の柱を持つことで、互いの情報を社内で流通させつつ、切磋琢磨していくことが可能なのです。川下からのニーズをしっかり吸い上げて、企画提案のできる営業につなげていきたいですね。
 

丸善製茶株式会社

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