第58号 ガンバルこの人 27

茶業に携わるたくさんのガンバル人の中から、とびきりの頑張りやさんをご紹介するこのページ。 今回ご紹介するのは、名古屋の茶香・丸源様です。創業は明治中頃。取材させていただいたアネックス本店店長の永井大也氏は、四代目に当たります。東急ハンズなどの商業施設が入る感度の高いアネックスビルに社長夫婦が出店したのは20年前。当時珍しかった日本茶喫茶も併設した、ふらりと立ち寄れるおしゃれなお店で大也氏が茶業に携わって、既に十年が経過しました。 実は「ロックDEお茶!/給茶スポット」のお話に真っ先にエントリーしていただいただけではなく「これは一店舗で頑張るものではない。いかに地域に 数多くの給茶スポットを誕生させるかが成功のためには必須だ」と、お茶屋さんに声をかけてくださいました。視野も心も広い大也氏にお話を伺いました。

●テイクアウトは時代の要請
 前々からテイクアウトはやりたかったんです。スターバックスのカップを持ちながら歩く人をちょこちょこ見かけていて、液体を持ち歩くのが一つのスタイルなんだと感じていました。但し劣化を考えて二の足を踏んでいたのです。色が変わる・風味が抜ける。それと紙コップでは雰囲気がちょっと‥。そこに「ロックDEお茶!で給茶スポット」という案内を見て、「ああ、こういうやり方があったんだ!」と目からウロコでした。マイナスイメージが払拭された感じです。もともとホットしかイメージしていませんでしたから。   
  以前はペットボトルを携帯することはちょっと恥ずかしいみたいな感覚があったと思うんですよ。今は全然抵抗ないでしょう。時代によって、人の感覚って変化しますよね。かつて日本茶の喫茶を始めた時には、「お茶を有料で飲む人がいるわけない」と父母は言われたりしたようですが、20年たった今はまったく違和感なくご利用いただいているわけです。このマイボトルで給茶スポットというスタイルも、急がずにコツコツと続けられるかどうかが、成功できるかどうかの分かれ道だと思うんです。今年やった、あんまりパッとしなかったから来年はやめてもっとちがうことに挑戦しよう、というような姿勢ではダメ、定着しません。
●客層が若返った!
 メディアが大きく取り上げてくれたからでしょうか、テレビを見ました、新聞で知りました、雑誌を読みました、と新規のお客様がたくさんいらっしゃいます。年齢層は三十歳から五十歳が中心。女性が七割・男性が三割。実際にマグボトルをその場で購入される方は男女半々といった感じです。逆に六十歳以上の人は「直飲みはイヤ」「ストローが欲しい」「フタで飲みたい」とタフマグはあまりお気に召さない方が多い。特に六十歳以上の男性は見向きもしません。環境問題には若い方の方がアンテナが高く、マイボトルを持つという行動がカッコイイと思えるのも若い世代なのですね。ランチの後に必ずいらっしゃる常連さんも出来て、オフィスの中でおいしいお茶を飲める環境が消失しているのかなあ、と推察しています。
●価格設定に悩む
 価格設定には悩みました。百円にするとお客さんは、自分で淹れるよりも給茶した方がトク、となるでしょう? あくまでも給茶スポットは急須で淹れるおいしさや楽しみを伝える種蒔きだと思うので、給茶を何度かしたら、「ああ、自分で淹れた方がトクだなあ」と感じてリーフを購入するという流れにしたいのです。   
  悩んだ末に煎茶は三百円、ほうじ茶・玄米茶は二百円に決めました。それなりの値段です。それでも飲みたい人に来てもらおう、と腹をくくりました。アイスもホットも同価格。そう、ホットの要望もあるので、「保存料は一切使っていませんのでお早めにお召し上がりください」と言い添えてお詰めしています。
プロのお茶屋の心意気
 「ロックDEお茶!」を一つの切り口にして、お茶のプロとして「こういう淹れ方もありますよ」と提案することも大切ですよね。たとえばアイス抹茶。愛知は産地に近いからか、抹茶を飲むことが日常的な行為なのですが、マグボトルに半分お水を入れて、そこに抹茶を入れ蓋をしてシェイクする。再び蓋を開けて氷を入れもう一度シェイクシェイク、という感じで、「シェイクDEお茶!」と名付けて(笑)お奨めしています。色々な情報をお伝えして、お茶の楽しさを実感していただきたいなあ、と思うんです。   
  ええ、もともと名古屋ではティーパーティの小塚さんが給茶スポットをやっていらっしゃいました。お店も近いので相談に行ったら、「給茶スポットは沢山あった方がいいよ!」とおっしゃって盛り上がりましてね、背中を押していただいた格好です。お茶屋さんは敵ではない、コンビニや自販機と戦う同志なんだ、と考えています。リピートを促すためにも、愛知県内の給茶スポットでスタンプラリーをするとか、五回給茶したら一回サービスとか、色々挑戦していきたいですね。