茶事記76号WEB用
4/16

●「お茶の里城南」というブランドで4 通販に参入するのも早かったですね。●専門店さんからの反発はありませんでしたか?●ずいぶん率直ですね(笑)。ティーテイスター。憧れの職業だから優秀な人材が集まります。翻って茶市場の光景は普段着と作業着。憧れには遠い。自社を見ると作業着でね(笑)。ですから社員の労働環境の改善は大きなテーマです。給料もですが、仕事に誇りを持てること、当事者として任すことも大切ですね。今年から専務と新たに若い三人の社員に仕入れを任せ、私は一切仕入れをしないことにしました。朝4時から鑑定場でわあわあやってますよ。もちろん自分がやった方が速いと感じることもありますが、けれど任された人間は必死になるし責任感と愛着が湧く。経験に勝る教育はないですから、若い三人の社員が将来良い結果を生むために今我慢して任せようと考えています。通販を立ち上げたのは一九八五年です。当時掛川には四十数社の茶問屋があったんですが、丸山製茶はランク付けしたら「中の下」、売上高五億円、パートさんを入れても八名の家族経営の会社でした。このままでは未来はない、という危機感、焦燥感があって通販を別会社でスタートしたのですが、パートさん一人と自分だけ。お金がなくてコンピュータが買えず、日中パートさんが電話で受けた注文を、丸山製茶の就業時間後にコンピュータを借りて、夕飯食べて風呂に入ってから夜自分で入力するような状態でした。お金も信用もないので、コンピュータをリースしようとしたら保証人が必要、と言われて悔しい思いもしましたよ。丸山製茶としては三代目なのですが、この時の起業体験、お金の苦労や屈辱感が、自分の経営者としての核を創ったのかもしれません。もちろんありました。ある茶専門店さんとの会話は忘れられませんね。「産地問屋が通販をやるからお茶が売れない」とおっしゃるので、「もしも私がやらなくても誰かがやる。通販は『注文する』『受け取る』『お金を払う』という3つの手間がかかるし、送料がかかるのだから専門店よりも安く販売することは容易ではない。通販の制約がない専門店ならではの売り方はあるはずだし、顧客の層も大きく違っています」と答えました。お茶を買ってもらいたいからと、言いたいことを言わないのはパートナーシップに反するという想いがありますし、それでもお取引が続くお茶屋さんも多いのです。また通販を始めたことにより得られた情報などをフィードバックしてきました。通販を立ち上げる一方で、袋詰めや本社外観お茶の里 城南。従来の拝見場とは一線を画す意見交換や交流のできる鑑定場。「お茶の里 城南」のエントランスで。女性社員ばかりの通販別会社だが、どの社員さんからも社長への信頼感と距離の近さが伝わってきた。鑑定開発室外観。

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る