茶事記76号WEB用
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畳屋のムスメ、「畳っていいな」を広げたい!松葉畳店イ草クリエイター 伊藤知美氏異業種の取り組みから、いつもとちがう角度から茶業を考えるページです。今回は畳屋の跡取り娘の奮戦記をお伝えします。●畳と日本茶の共通点●覚悟を決めて会社を辞める ●雑貨から入り畳につなげるプチ取材してつくづく感じたのは、畳屋さんとお茶屋さんの共通点だ。日本茶がペットボトル飲料やコーヒーに押され日常茶飯でなくなったように、マンションに和室や床の間がなくなって久しく、畳替えというリピート需要は風前の灯。松葉畳店さんのある静岡県焼津市でも四〇年前には町に二〇件あった畳屋は現在四件。いずれも後継者はなく、現店主が引退すれば廃業するという運命だった。三姉妹の三女の知美さんは、不動産会社のバリバリ営業ウーマン。社内恋愛の末結婚され、子育てママとして充実の日々を送っていたが、ふと気づくと父親は六十七歳。「ぼちぼちやめていこうかなー」という言葉を聞いた時に、「畳屋の娘として、ここがなくなっちゃうのはほんとうに寂しいことだなあ」という想いがヒタヒタと胸に迫ってきた。「畳の部屋って柔らかいしやさしい。足が触れた時の心地よさ。和室は古くてダサくてカッコ悪いというのではなくて、畳ってカッコイイじゃん、と思ってもらいたいな」と語る知美さんは、自他共に認める猪突猛進タイプ。不動産会社にいた経験から、建築の観点から見れば畳がいかに厳しいかは覚悟の上で二年前に会社を辞めた。夫は理解を示したが、父は巻き込んで申し訳ないと娘の選択を心配したという。いきなり畳を売るのは難しい、と考え、まずは畳に興味を持ってもらえるアイテムを、と和モダンのリースを藁ではなくイ草で作ってみた。これが好評で「マルシェに出てみないか?」と声がかかる。イ草の香りがふわっと広がる感じ。心地いい手触り。今まで畳との接点がなかった人が「すごくいい!」と購入していく。ブックカバー、ランチョンマット、コースター、名刺入れ、お祝儀袋、クラッチバックと、マルシェに出るたびに雑貨のアイテムを増やし、今では「面白いモノ売ってるね」と百貨店からも声がかかるようになった。フェイスブックを見て、わざわざ東京から店までクラッチバックを買いに来る人もいる。和室にこだわらず、洋室の床材として畳を提案するなどして、雑貨を入口として畳の受注にたどり着いた事例は現在八件。「藁の畳は女一人では持てない」と夫も会社を辞め、現在畳職人の修行中。大量生産大量消費の対極を行く、「小さい企業の戦い方」にワクワクした。 9父親と夫と。ポップな畳のヘリのデザインに注目。店頭の雑貨コーナー。ロゴもデザインし、畳への想いを伝えるブランディングにも力を入れる。異業種に学ぶ44松葉畳店〒425-0068静岡県焼津市中新田1005-5電話番号/FAX:054-624-9669Mail:matsubatatamiten@gmail.comShop:www.matsubatatam.thebase.in

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