おづつみ園は、坂本光司氏のベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」において、「一八六八年(明治元年)の創業以来、社会情勢の変化に対応しつつ緑茶の製造と販売を続けている独自固有の長所を持った企業」と紹介されている。地域密着でお茶の楽しみ方を伝え、地域からの支持を受け、春日部市内の圧倒的なシェアであることも評価され、第一回「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」において審査委員会特別賞を受賞した。「『あいててよかった』ではなくて、『なくなったら困る』店でありたい。いえ、店?企業?場所?ぴったりする言葉が見つからないのですが、集える場所というのか、心の拠りどころというか、精神性も含めての存在でありたいと思うのです」言葉を真摯に選びながら、社長は前回の取材から変わらない、おづつみ園の大切にしていることを挙げた。しかし「なくてはならない」ための手段は常に変わるのだと言う。「『お茶を売る』ことが過去においてはおづつみ園が『なくてはならない』ための手段だったわけですが、現在は『モノではなくお茶の存在価値をどう表現するのか』というのが大きなテーマです。現在の顧客層、五十歳以上の人には『お茶っ葉』がお茶ですが、もっと若い世代にとってお茶は『お茶を飲む空間』=外で飲むペットボトル茶だったり『お茶の時間』=心やすまる時だったり『お茶を一緒に飲む仲間』=○○会や△△友(小さなコミュニティ)だったりする。それを『お茶の文化』と定義すると堅苦しい日本茶を真ん中に、まっとうな日本の食のあり方を伝えたい。有限会社おづつみ園積極的な経営で明日を拓く企業をご紹介するこのコーナー。今回ご紹介するのは春日部のおづつみ園様。平成八年三十五号に春日部駅西口にふじ通り店開店の核となった当時三十六歳の宏専務(現社長)にお話をお伺いしました。そこから二十年近い歳月の中で「地域になくてはならない店」として確固たる地位を築かれ、今また新しくカフェをオープンして次のステージを目指していらっしゃいます。取材にお伺いしたのは、三十年継続されている春日部市内牧の自社茶園でのお茶摘み教室。お茶摘み体験、荒茶工場見学、お茶を使った手作りランチ、お茶の淹れ方セミナーという一連の流れは、続けてきたからこそのノウハウに満ち、一人一五〇〇円の参加費でおづつみ園のファンになる仕掛け。社内の役割分担も素晴らしく、茶摘み体験を引率する会長、サクサクと手づくりランチを準備する専務とスタッフ、記念撮影と淹れ方セミナーとウィットに富んだナビゲーターを担う社長。前回取材時には無料だった茶摘み体験が、ぐんぐん進化して有料でも参加したいイベントになり、いまだにキャンセル待ちが絶えないように、成功事例に甘んじない経営姿勢が感動的でした。●おづつみ園がなくなったら困る。●世代を商圏ととらえる。クローズアップ・ピープル経営者登場46代表取締役社長尾堤宏氏社長。全体を俯瞰する鳥の目と、現場オペレーションを知る虫の目を併せ持つ。カフェ入口。春夏秋冬から一文字ずつとって「はなあゆ」と名づけた。3
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