茶事記73号WEB用
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●農業振興への貢献●明文化する推進力●進化するプロセスを楽しむした一万二千坪の土地は市街化調整区域、これだけの面積の土地を物販の施設にした前例はない。パブリックコメント、有識者会議などいくつものハードルがある。簡単にオーケーをしてしまうと、心無い開発業者に前例として悪用される危険もあることから、行政は慎重だった。仙台市中心部から車で三十分の温泉地として知られる秋保。ここでこだわりの農業に取り組む生産者と出会う。無農薬、有機栽培に三十年間取り組んできた大滝自然農園を営む佐藤さん、脱サラして佐藤さんの指導で農業を始めたくまっこ農園の渡辺さん、花工房はゆな花壇の及川さん、江戸末期より地産地消の豆腐づくりを続ける太田豆腐店の太田さん。彼らのまっすぐな生産者魂を広く深く伝えるために、農業振興への貢献をこのプロジェクトの真ん中においた。四年前(平成二十二年)に健一氏が作成した夢手帳には「地域社会への貢献」として、「東北の観光の窓口である秋保の地から、地域情報の発信者となる」「農業が魅力的な仕事として活性化し、持続可能で豊かな地域を創り上げる」と明記されたのだ。「いわゆる六次産業化ですね。このプロジェクトによって、他の人の役に立つことなら必ず道は拓ける、ということを実感しました。きっと自社の利益だけを追求していたら、行き詰まったと思います。もう一つ。会長がしつこく粘り強く諦めずに熱意を持ち続け、明文化し公言し続けたこと。これが大きな推進力でした」本社応接室に貼られた秋保ヴィレッジの絵には「未来をみんなで画きましょう」と書いてある。実は、秋保ヴィレッジはオープンから脈々と変化を遂げる進行形のプロジェクトなのだ。たとえば、野菜や食品、お茶の物販、フードコートをメインにした物産館「アグリエの森」は、宮城県最大級の純木造建築として多くの人で賑わっているが、秋保ヴィレッジガーデンは、桜の季節に向けてガーデニングファンが憧れるような庭を着々と造成中。旧秋保村の地形をモデルに、ジオラマのように散策できるガーデンだ。「モノだけでは売れない時代ですから、いかに体験を楽しんでいただくかが、リピートの核になると考えているのです。また、これが完成ですよ、という差し出し方よりも、お客様や季節と共に一つ一つ創り上げていく、そのプロセスや成長の過程を楽しんでいただくことで、再訪する理由を創り、ファンになっていただくことを秋保ヴィレッジ入口。コスモスの向こうで造成中の秋保ヴィレッジガーデン。本社に貼られる秋保ヴィレッジのポスターは、アグリエの森にも掲げられている。「未来をみんなで画きましょう」秋保ヴィレッジの理念を語るパンフレット。4

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