モノ言わぬモノにモノ言わすモノづくり株式会社久くば原ら本ほん家けグループ本社代表取締役社長 河邉哲司氏異業種の取り組みから、茶業のヒントをお伝えしているこのページ。いつもとちがう角度から茶業を考える、そんなきっかけにしていただければ幸いです。今回ご紹介するのは「くばらのキャベツのうまたれ」「椒しょぼ房う庵あんの辛子明太子」「茅かや乃の舎やの調味料」の各ブランドで知られる久原本家グループ様。明治二十六年創業の福岡県の醤油蔵を、四代目社長の河邉哲司氏が、日本の食文化の知恵を次世代につなげる総合食品メーカーに育てられました。博多発のご当地調味料を全国区にし、北海道産の卵など原材料にとことんこだわった明太子ブランドを確立。蛍の里にある自然食レストラン「茅乃舎」を情報発信拠点として、化学調味料・保存料無添加の調味料・加工食品を「茅乃舎」ブランドとして充実させ、直営店と通信販売で直販されています。紙面が足りない示唆に溢れる取材でした。●OEMで成長●自社ブランドをつくる●価値を伝える直営店●少しカンタン、でも本物私が大学を出て家業に入った三十七年前は、県内に一五〇社の醤油蔵がありました。今は一〇七社、醤油業界という切り口で見れば斜陽です。伝統的な日本の食材という点で、醤油とお茶は似ているかもしれません。夢も希望もなく家業に入り(笑)、最初はOEMで餃子のたれ、納豆のたれなどを作り成長しました。売上は伸びましたが、自社ブランドが何としてでも欲しかった。いつ取引を打ち切られるか、と納入先の顔色をうかがってビクビクして心配ばかり、臆病なんです。博多の焼き鳥屋の定番メニューであるキャベツの角切りにかける酢だれをヒントに、「キャベツのうまたれ」を商品化し、全国に広げました。明太子業界では最後発でしたが、北海道産の卵にこだわった辛子明太子のブランド「椒房庵」を立ち上げ、博多土産としてご指名いただくようになりました。ただ、それでもなお、OEMや量販店向けの商品はやはりいつ切られるかと心配でたまらない(笑)売り場が欲しくて、醤油蔵の隣に直売店の「椒房庵久山本店」(現・久原本家総本店)をオープンし、その奥の里山に茅乃舎という自然食レストランを設けました。原料にも製法にもこだわって作りますから、私どもの商品の原価は高くなる。いい商品を直営店舗と通販自社直営ので直接お客様にお届けすることができれば、持続可能ではないかとシンプルに考えたのです。もともと醤油業なので、小売や飲食は今も素人です。わざわざこんな田舎まで足を運んでくださるお客様が本当にありがたく、そのご恩をどうお返しをしようかと懸命に取り組みました。椒房庵の明太子も最初は道楽と言われましたし、黒字化するまでに十年もかかりましたが、商品の価値を伝えるために、対面販売で実際に食べて味わっていただくことに力を注ぎました。この苦労があったからこそ、今があるのです。椒房庵の明太子は天然物ゆえに原材茅乃舎。里山の川のほとりにたたずむ。わざわざ訪れる人で予約がいっぱい。本社玄関。微差が大差に通じることが伝わる行き届いた空間。「トップの思想をいかに浸透させるか」妥協せず、やり切る河邉社長の迫力。13異業種に学ぶ41
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