●モノの本質は変わっていない●お客様の感性にアプローチする●中身はリピートのため●弱点を翻訳し強みに変える私は五十四歳ですが、今コンビニで売っているモノと、昔ぼくらが買っていたモノ。本質は変わっていないでしょう。パンはパンだし、弁当は弁当、お茶はお茶。変わったのは差し出し方であり、売れるモデルであり、デザインなのです。お客様の感性は、嫌でも上がります。様々な会社が、すごいスピードで、多彩な新しい価値や提案を差し出す中で、さっきまで当たり前だったことは、どんどん陳腐化して色褪せていく。だから、お客様が「この程度だろう」と思っている期待値を、ほんの少しだけ超え続けることが大切。「えっ」と二度見するような感覚ですね。その驚きが、手に取りたくなったり、買いたくなったり、人に言いたくなったり、プレゼントしたくなったりする原動力なんです。畑からとれる農産物であるお茶。これを「コストで買う」時と「コストでなく買う」時がある。私は「コストでなく買う」気持ちにさせることが、お茶屋のマーケティングだと思います。「モノが売れる」と考えるのではなく、「ヒトが買う」と考えてみる。同じ「売れない」場合でも、「モノが売れる」思考だと「価格が高い」「品質が悪い」とモノのせいになりますが、「ヒトが買う」思考だと「なぜ買いたくならなかったのか?」とパッケージやネーミングや店構えや接客など、お客様の感性を刺激する部分に着目するようになります。先日、秋のお茶まつりでデビューした「新米玄米茶」。問屋さんからは「新米だからって玄米の味は変わりませんよ」と言われました。けれどお客様はどうでしょう?「新米?おいしいかも?一度試してみようかしら?」となりませんか。「特選玄米茶」というよりも、「えっ新米?何それ?」と心に引っかかるでしょう。中身は買ってもらってから初めて問題になるのです。リピートしてもらうためにはもちろん中身のおいしさは重要ですが、まずはお客様が手に取りたくなることが先。お茶屋とはこんな風に知恵を絞って、「お茶でお客様を喜ばせるのが仕事」だと思うのです。よく「うちは知名度がないから」「強みがないから」とおっしゃる方がいらっしゃるけれど、強みと弱みはコインの裏表ですよ。知名度がないからこそ、弱みを強みにひっくり返して、ブランドになることを目指す。たとえば・・・相続税対策で田んぼの中にポツンとマンションを作ってしまった。高速道路「ガンバルこの人」の取材でお伺いしたのに、「こんなに面白いマーケティングのお話を単発にしてはもったいない!」と考え、連続講座として掲載することにしました。講師は、福井県坂井市の株式会社椿宗善の社長、山口健治氏です。卸問屋から小売りに業態転換し、「三国屋善五郎」を全国ブランドに育て、2012年10月に三国屋を退職、2013年2月に椿宗善を立ち上げられました。現在、福井と金沢に二店舗展開されていますが、取材に伺った福井店は決して立地がよいとは言えない店舗。わざわざ訪れたくなる魅力づくりと、弱みを強みにひっくり返す発想力についてお伝えしましょう。9お茶屋のブランディング講座①「お茶でお客様を喜ばせる」のがお茶屋の仕事です弱みを強みに変える!!
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